富士山富士宮口新五合目の光害の状況  - 2000年 -

撮影地: 富士山富士宮口新五合目

月刊星ナビ 2001年1月号 掲載

  • 富士山富士宮口新五合目(標高2400m)での全天カメラによる撮影です。
    フィルムは、左画像・コダックエクタクロームE200、右画像・同E100Sですので、写りの純粋な比較はできないと思いますが、ほぼ露出条件を合わせてあります。
    両画像とも、上→西、下→東、左→北、右→南となっています。
    北側(左側)のシルエットが盛り上がっている部分が、富士山山頂付近です。右画像では山小屋と登山者の灯りが見えています(この日は山開きの日でした)。共に円周部の赤い光は車の光跡です。

  • 高山に登ると、よく雲海によって下界が遮られる光景を見かけます。
    上の写真は、定点撮影による2カットで、左側が「雲海が無い場合」、右側が「雲海がある場合」です。
    富士山の五合目ともなるとその標高の高さから雲海の上に出ることがよくありますが、雲海が“無い場合”と“ある場合”とでは、星空の見え方が大きく変わってきます。

  • 雲海が無い場合(左画像)
    この撮影日は麓まで晴れ渡った天気でした。
    下界の夜景(町灯り)の影響が上空にまで及び、見える星の数も少なく、天の川も淡い写りになっています。夜空全体が青緑色に写っていますが、これが町灯りそのものと言えます。
    辛うじて2400mという標高に助けられ、天頂付近に暗い夜空が残っていますが、高度45度以下、特に30度以下に部分ついては、街の明かりが強烈でほとんど星が写っていません。印象として、全体的にぼんやりとした眠たい空に写ってしまっています。

  • 雲海がある場合(右画像)
    ほぼ同条件で撮影しているにもかかわらず、星の光が強く、また天の川が濃く写っています。空の色も青緑色ではなく漆黒であることが分かります。
    雲海が夜景(町明かり)に蓋をした状態で、本来の星空に近い状態が写っていると言えます。(それでも東側の東京方面(写真下方向)は強烈に明るいのですが…)

  • このように、町の灯りがシャットアウトされると、本来の星空が見えてくるのです。
    よく「星が見えなくなった」とか「都会から星は消えた」などと言いますが、もちろん星そのものがなくなったわけではなく、“星の見える環境”が無くなったと言うべきでしょう。
    “星の見える環境”さえ整えば、まだまだきれいな星空を取り戻すことはできるのです。